提案する男

奈良 光信
(ならみつのぶ)さん

自称:提案をし続け、
   アンチテーゼを出し続ける「企画屋」
住所:nara@scene.co.jp


「インタビューをするなら、初めはやっぱりこの人だ!」と思うくらい、2年前に出会ってから、私が影響を受け続けている、大好きな人です。

山口市の一の坂川でホタルを見た次の日、あらたまって初めてインタビューをしたのでした。(01.05.20.Sun)

■好きな言葉、座右の銘なんて、ありますか?
意識的に、そういう言葉を持つのをやめようとしてる。
「話し言葉」として、その時、その人に対して伝える言葉はあるけど、
「書き言葉」としては、言葉の持つイメージを伝えようと思うから、表現しにくいし。
寄せ書きなんて、すっごく困るんだけど、その時は「燕石」※と書く。
自分って、こんなつまらないものが好きな、そんなヤツなんだよなぁって。
あれだな、格言をいっぱい知ってるヤツは、ヤだな。
   ※えんせき:<燕山から出る石の意>
         玉に似て玉でない石。まがいもの。転じて、価値のない物を宝として誇ること。
         また、才のない者が慢心すること。 (広辞苑)

■かなえたい夢は、お持ちですか?
「こうなったらいいなぁ」というものが「夢」ではないと思ってる。
映画「フラッシュ・ダンス」に"If you lost your dream,you will die."というセリフがあるんだけど、
「夢」は、それを実現させていく過程を楽しむものであって、それにかける梯子やステップなんていうものがあって、その過程・プロセスを、「人生」というんじゃないかな?と思う。
いつも、「夢」の途中にいたいし、プロセスを楽しみながら、そういう中で死んでいくのがしあわせ、じゃないかな。

■人におススメしたいような、好きなものってありますか?
基本的には、ものをあんまり持たないようにしてる。買ったものも、いつか無くしちゃうみたいな、ものとは短い時間のつきあいでいたいと思ってる。
そんな自分だけど、おそらく一番多く持ってるものは、本。もしかしたら、人間関係なんてものかもしれないけど。
でも、「無人島に持って行くなら」なんて例えがあるけど、それだけで機能を果たす、意味のある「もの」(例えば携帯なんて、持ってるだけじゃ意味をなさないでしょ)で言えば、「杜甫の詩集」かな、持って行きたいものって。杜甫は、律詩の名手なんて言われてるけど、社会性のある、長い詩が好きだな。
無人島に行ったって、死ぬまで仕事したいんだけどね。生きていく中で、テーマややり方が少しずつ変わっていくけど、「第二の人生」なんてないと思ってるから。

■現在関わっておられることや、「こんなことに詳しい」ってことを、教えて下さい。
今までの、三鷹国際交流協会&国際基督教大学のスタディツアーの報告書を差し上げます。なんでそんなつまんないことやってるのか、分かってもらえると思う。いろんな国へ行くことが目的だろうと思われがちだけど、出発するまでの、その過程を、ものすごく大事にしてる。自分の住んでる地域や、はたまた教育のあり方や、人間関係のつくり方なんてことに対するアンチテーゼだったり、提案だったりが、そこから生まれる。
スタディツアーに参加する学生に対しては、社会の子として接する面があり、自分の子どものように接する面もある。逆に自分の子どもには、社会の父としても接するしね。
人生とか、世界とかに対する基本が確立できていない、自分の基軸がよくわからない。何となく、なんとなく原点にあるのは、言葉にすれば「自由」「平等」「平和」かな。なんとなくそういう価値観はある。(戦争がない状態だから「平和」ではないよ。「平和」って、もしかしたら、自由や平等を壊すものとの戦いかもしれない。)
要は、成長できなかったんだよね。学生の頃、社会学に興味を持ったり、学生運動に関わって、巨大なイマジネーションの中で過ごし、それと相容れなかったり、そういうことが要因となって、コミュニティとか小集団ってものを、ものすごく大事にしてる。

□インタビューを終えて
「眼」に、とても表情のある人です。四方に視線を向け、感覚を研ぎ澄ませている時、それは触覚のよう。いつも、何か企んでいる時は、悪戯っぽい目をして、唇を噛む。
大いに飲み、大いに笑う。「仕事なんかしなかったら吸わないのに」という煙草。「一生仕事をし続けたい」ということは、禁煙生活はやって来ないのでしょう。明石家さんまが大好き。「うちの国じゃぁね」と、フィリピンのことを言う。
この人に感化されて、私は本を読むようになりました。奈良さんの好きな鶴見良行先生や、宮本常一先生の本ではないけれど。「決めないと、読み過ぎちゃうんだ」と、1年に100冊までしか本を読まない。
年齢は、関係ない。得るもののある人はみな「先生」。
この人と話すとみんな、いっぺんで好きになっちゃうんじゃないかって、思います。(コマツ)